August ohne GebetKrise



          私はここにいます
         私は"ここ"にいます


     文化の残骸を目の前にして
     ただ茫然と立ち尽くす
     膝を折る事はしなかった
     それが 唯一残された矜持きょうじのように感じられた


     主なきとて柳の枝を折ることは叶うだろう
     方向性を見失った私達
     これから一体何が支えになるというのだろう
     涙はまだ 双眸そうぼうの中


     時の死という遅効性の毒
     固有名詞を持たない細胞の死
     有機体という形体の崩壊
     そう それは文字によって殺された者達


     言霊が失われた世界
     空間も望めず 時も持てない
     血が冷めていくのを――
     頭が冴えていくのを―― 感じる


     通り名の力を剥ぎ
     生涯飽きる事のない物語を手にする
     その題名は固有の名
     永遠に守り通せ その御名を


     ここに私はいます
     ・・・・「ここ」に私はいます